書籍紹介:「そろそろお酒やめようかな と思ったときに読む本」垣渕洋一 著/青春出版社

以前RHOで講演をしていただいたこともある東京アルコール医療総合センター長の垣渕先生が書籍を出版されておりましたので、書店で購入して読んでみました。

沖縄県のみならず、全国的にアルコール依存症の問題は多いそうですが、こうした本が問題解決のきっかけになることもあります。「ちょっと手に取ってみよう」と思えるきっかけとなればと思い、ちょっとした紹介と感想を記しておこうと思います。

書籍・目次紹介

そろそろ、お酒やめようかな と思ったときに読む本 「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本

垣渕洋一 著 / 青春出版社


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はじめに
1章:変わりつつあるお酒と日本人の関係
2章:今のうちに知っておきたい「危険なサイン」
3章:お酒を飲んだとき、体では何が起きているか
4章:人生が一変!お酒をやめる7つのメリット
5章:“続く仕組み”を作れば禁酒は難しくない
6章:飲み続けたとき、あなたに起こること
おわりに
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<著者略歴>
東京アルコール医療総合センター・センター長。成増厚生病院副院長。医学博士。筑波大学大学院修了後、2003年より成増厚生病院附属の東京アルコール医療総合センターにて精神科医として勤務。アルコール依存症の回復には行動変容が重要だという信念のもと、最新の知見を応用した治療を行い多くの回復者を送り出している。臨床のかたわら、学会や執筆、地域精神保健、産業精神保健でも活躍中。

本書の内容・特徴

アルコール依存症に関する書籍を数冊読んだことがありますが、本書は非常にユニークな特徴をもった本だと思いました。それはおそらく、この本が「メソッド(方法)に特化している」からではないかと考えています。まるでビジネス書のように読めることがまず驚きでした。

禁酒やアルコール依存症に関する本の定石としては、

酒害の実態 → 依存症患者の特性・心理状態 → 医療機関での取り組み・回復ケース → 相談先についての紹介・情報提供

のような感じで「禁酒や治療に意識を向けさせる」ことに主眼が置かれているのではないかと思いますが、本書では少し違っていて、

社会的背景の変化 → やめ時の提示 → 飲酒のリスク → 飲酒をやめるメリット → 実践方法 → 期待される成果 (→ 情報提供)

という流れで進行します。まるで提案書みたいですね。
「お酒をやめようかな」「お酒飲みたくないな」と考えている人を対象に「理論武装させ」、「セルフマネジメントの手段を提供する」という点に主眼があります。そのため「自衛」のための本と言えるかもしれません。

「飲まない人」は社会的に弱い立場に立たされがちですが、本書では「それでいいんだよ」と繰り返しコーチしてくれるので、心強く感じる人もきっと多いだろうと思います。

飲酒が健康にもたらす害はもちろん、「シラフを選ぶのが世界的なトレンド」や「アルハラ」といった社会背景や文化的背景についても触れていて、飲酒について多角的に考えることができて面白いです。お酒をやめようとまでは思っていなくとも、人事やマネジメントに関わる方も読んでおくといいかもしれません。

アルコール依存症やその他の依存症では、研究によって、回復する確率の高いメソッドが確立されつつあります。もちろん、誰にでもあてはまるわけではありませんし、簡単に実践できるとも限りません。そもそも依存症のような重いレベルではないことの方がずっと多いでしょう。しかし、正しい考え方や方法論を知っておくことはセルフケアや身近な方のケアにきっと役立つはずです。

読後の感想

セルフマネジメントに関するビジネス書を一冊読んだ後のような「何かできそう」という気持ちになる内容だった、というのが率直な感想です。仕事や生活で使える技術や知識を習得したときのワクワクするような気持ちになりました。

基本的に本書は「お酒に対してポジティブでない」人に向けられたものです。そのため、お酒の風味や時間を本当に楽しみたいと考えている「真のお酒好き」の方には合わない内容も多くおすすめできません。しかし、「酔う」ことや「お酒を通して人と付き合う」ことが飲酒の主な目的になっている人にとっては、この本はお酒との付き合い方を見直すいい機会になるのではないでしょうか。

沖縄についても本書中でいくつか言及されていたのも目を引きました。「日本で唯一自治体が節酒アプリ(※)を提供している都道府県」というのは名誉なことでもありますが、それほど飲酒からの害が深刻な地域だということです。
しかし、残念ながらそういった情報を知らなかったり、見て見ぬふりをしていた人も多いのではないでしょうか。また、健康長寿の県から状況が変わりつつあることにも注目していただいており、当事者である県民も意識や行動をアップデートしていく必要性を一層強く感じました。

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本書のさまざまなケースは主に都内や関東のもので、沖縄の状況とは違いがあるのかもしれません。アメリカでは日本と違って「臓器障害より先に暴力などの問題がきっかけで入院する人が多い」とのことですが、もしかしたら沖縄もそうなんじゃないかという気もします(統計上はわかりません)。私はお酒がらみの暴力や事故が原因で病院に行くことになったという話をよく耳にするからそのように思うのかもしれません。

お酒と距離を置きたい人に勇気をくれる

本の帯には「禁酒は意思が1割、仕組みが9割」と書かれていますが、これは本書の主張そのものと言えます。そのため、禁酒のための理屈や精神論よりも「とにかく方法論を知りたい」という人にもおすすめです。

ビジネスでも「決心は何の役にも立たない」と言われますが、この場合、変えるべきは「行動」「習慣」であると言います。では、その習慣を変えるにはどうしたらいいかとなったときに出てくるのが「仕組み」であり、そのために活用する「テクノロジー」です。
本書では禁酒や減酒に向けた臨床現場での実践ノウハウや、役立つアプリ・情報源などにまで話が及んでいるため、「この手の本は読み飽きた」という人にも、十分な読み応えがあるのではないかと思いました。

以前、垣渕先生の講演を聴いたときに、「お酒には文化的なものも関わっているため、一方的になくせという立場を取ることはできない」とおっしゃっていたことを覚えています。

沖縄はまさにそういった飲酒文化が強い地域でもあります。居酒屋や酒造メーカーで働く人も多く、地域の産業上もまだまだお酒は欠かせないのが実情です。そのため、地域としてのお酒への接し方はすぐには変わらないでしょう。

それでも、お酒の場を負担に感じている個人にとって、本書は勇気づけられる内容ばかりです。飲まない、飲めないことに対し、「これでいいんだ」と思えるだけでも気楽になれる人は沖縄でもきっと多いのではないでしょうか。
大学生や新社会人など、これからお酒に触れる機会が増えそうな人、すでにお酒との付き合いに悩んでいる人に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

そろそろ、お酒やめようかな と思ったときに読む本 「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本

垣渕洋一 著 / 青春出版社


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