【イベント報告】10月20日 RHO健康講座のご報告

皆さんお元気ですか?RHO代表の平良です。

先日、RHO健康講座「楽しく学べる依存症の話」セミナーを開催しました。

今回は東京アルコール医療総合センターの垣渕洋一センター長を招いて行いました。

日本のアルコール依存症研究・治療の第一人者で、
臨床だけでなく全国の行政機関・医療機関への指導のための講演活動や学会運営など、
非常にお忙しい先生ですが、半年以上前から調整を重ねてお越しいただくことになりました。

過去にも講演をお願いさせていただき、いずれも大好評なのですが、

20181020依存症セミナー
「中城湾の美しさにドーパミンが出た」とユーモアを随所に交えて講演してくださった垣渕センター長

今回も「さすが」の充実した内容でとても素晴らしかったです。

そんなセミナーの様子を抜粋して紹介したいと思います。
(それでも長文。ご了承ください)

沖縄県は健康的な生活習慣を作る意味が大きい

冒頭、依存症に関する話の前に、
65歳未満の死亡率や健康スコアのデータから、
「沖縄県では健康的な生活習慣を作る意味が他の都道府県より大きい」
というお話をいただきました。

各所で指摘されている通り、
働き盛り世代の生活習慣の不健康ぶりが顕著です。

ブレスローの健康スコアで示される7つの健康習慣(以下図)で、
飲酒の問題は他への影響も大きく、
沖縄でも特に重要な問題のひとつであると指摘がありました。

ブレスローの健康スコア
アルコールはその他の項目にも関係が深く重要。

依存症が増えた社会的背景

過去と比べて、依存症への社会的関心が高まっています。

日本人の自己肯定感の低さや、自己否定感の強さ、
また将来への希望や夢を持てない不安感、
企業活動による嗜癖行動を促進する商品やサービスの展開

などがその社会的背景になっていると思われ、
その中でもがき、自分を癒やすために
束の間の「幸福感」を得るために依存が始まると言います。

薬物などの非合法な物への依存は社会的なリスクが高く、
また高額になるため継続が難しいそうですが、
最終的に安価で効果の高いアルコールに依存症患者は
集中しやすい傾向があるそうです(ターミナル・ドラッグと言われる理由)。

アルコールの有害さは薬物でもダントツ
使用者だけでなく他の人への有害さも際立つ

その他、最近はギャンブルやゲーム、買い物などの行動嗜癖、
恋愛や世話焼きなどの関係嗜癖も多くなってきていると言います。

よく「酒は百薬の長」と言いますが、
これは中国の王莽という皇帝が酒税を始めた頃の
キャッチコピーに由来しているとのこと。

「これを言い出した王莽は医者ではない」

と現代の医師(講師)は明言されておりました。

さて、皆さんは2000年前の皇帝と現代の医師、どちらを信じますか?

依存症の原点とも言えるアルコール依存

アルコールは人間が最も古く使ってきた依存性物質で、
その強さは実は覚せい剤などと比べても大差ないほどだそうです。

そのため、血管などに直接投与はせずに、
薬物としては消毒などの塗布に用途が限られています。

しかし、私たちはそれを普段から経口摂取しているのです。怖い。

薬物の依存性の強さを比較する
ラットの実験で薬物投与までの必要仕事量から依存性を比較した結果。アルコールはモルヒネと同レベル。

依存症の治療のためのラット実験によれば、
依存性薬物は社会的に「孤立した」環境だと
強い魅力で対象を虜にするという研究結果が確認されています。

しかし、社会的に「繋がっている」状態では、
依存性薬物の魅力は激減するという実験結果があるそうです。

ラットの楽園
他のラットとグルーミングしたり一緒に遊べる環境では薬物への依存度の低下が見られた。

このことから、「孤独」は依存症や多くの健康障害において
重要なファクターとして考えられるそうです。

日本のアルコール依存症患者数は人口の1%程度、100万人ほどと言い、
依存症予備軍は400~1000万人と花粉症や糖尿病の次に多いとか。

「否認の病気」と言われるだけあって、
なかなか表に出てこないだけで、実は周囲にも潜んでいるのかも…。

薬or毒?どちらでもアルコールはすごかった

続いてアルコールそのものについてのお話がありました。

垣渕センター長のお話では、
精神科薬としては、様々な症状に対して「魔法の薬」
言っていいほどの効果があるのがアルコールだそうです。

しかし、体にとっては有害なところが多く、
多くの内科疾患や不眠、うつ病の原因になるそうです。
少量なら健康に良いという理論も最近は覆されているようです。

飲酒をする人の多くは、様々な社会的な適合へのストレスを、
飲酒によって「自己治療」していると考えることができ、
自己治療しているうちに依存となっていくと見られています。

また、アルコールは耐性ができてくると飲酒量が増加し、
そのうちに連続した飲酒習慣になっていくそうです。

付き合いやイベント時だけ(機会飲酒)だったのが、
徐々に晩酌が毎日の習慣になっていき(習慣飲酒)
飲まないと不安になったり調子が出なくなっていく(強迫飲酒)
そういうサイクルがあると言います。

飲酒習慣と飲酒問題
右に行くほど深刻な飲酒で問題も増加。

そして、そのサイクルを過ぎると、
今度は数日飲み、数日~数週休んで、
また飲める時に大量に飲む日が続く(連続飲酒)ようになります。

この時期になると「自分で節制てきている」と誤解しますが、
実際には強迫飲酒(ほぼ依存症の段階)から進んでいるため、
様々なトラブルが発生しやすくなるとのことです。

知らないと「飲まない時はいい人、しっかりした人」と、
間違った見方をしてしまう可能性もあるので注意しましょう。

ちなみに、アルコール依存症もしくは依存症が疑われる人に通院を進めるべきタイミングも紹介いただきました。

  • 肝硬変や心筋症など重篤な身体疾患を抱えた場合
  • 過去に依存症と診断され、治療を受けた場合
  • 節酒が失敗し、症状の悪化や仕事・家庭での問題の悪化、酒害増加がある場合
  • 強い離脱症状(発汗、不眠、手指が震える、強い飲酒欲求など)が出る場合

ぜひ、参考にしていただけたらと思います。

「不適切な飲酒」から生じる問題
アルコール依存だけでなく、多くの問題の根幹には不適切な飲酒があることが多い。

実は楽しい?アルコール依存症治療の最前線

アルコール依存症について様々に誤解があったと
参加者の多くが驚いたのがこの箇所です。

依存症からの回復について、
「認める」「信じる」「委ねる」がポイントと紹介がありました。

依存症からの回復
「認める」「信じる」「委ねる」が変化のポイント

この後の話にも続くのですが、
非常に治療方針が人格的というか、
患者の人格に配慮するものになっていると感じられました。

巷で依存症に陥る人というのは
「意志が弱くだらしない人」
と言われがちなのですが、
実際には「真面目なしっかりした人」に多いのだそうです。

今、垣渕センター長は節酒指導に力を入れているそうですが、
プログラムはワークブックや飲酒日記を活用したもので、
グループワークを行いながら目標を設定していくものです。

話を聞いていると、予想外に参加者どうしで盛り上がり、
楽しい雰囲気でプログラムが行われているとのこと。

プログラムに参加するとハンコを押してもらえたり、
飲まずに済んだ日には青や緑のシールを貼れたり、
ドクターから花丸をつけてもらえたりするという、
まるで小学生(?)が喜びそうなプログラムなのです。

小さな変化で自己肯定感アップ!
援助者の心配をよそに、患者たちは意外と盛り上がるそうです。

でも、依存症になる人はマジメな人が多く、

「数日飲まずいたシールが続いたのでそれを崩したくない」
「また不参加の空欄ができてしまうのは許せない」

そういうこだわりの強さから、周囲の予想外に、
プログラムを頑張って続けてくれるそう。

ハンコの数を競い合っていたり、

「ハンコを偽造して押してもマルがもらえた」
「ええっ!うそー!」

みたいな、学生の休み時間みたいな雰囲気で
楽しそうな声も聞こえてくるそうです。

喫煙スペースでタバコを吸いながら行われる
「スモーキングミーティング」なるものが
入院患者の中で自主的に行われているとかいないとか。

形は何にせよ、「繋がっている」状況が作られることで、
依存からの脱却も早まることが期待されるのでしょうね。

ちょっと笑ってしまうようなお話も多く、
「外部と隔離した環境でひたすらアルコールの害を徹底教育する」ような
閉塞感のあるプログラムを想像していた私としては、
とても意外で、でも理にかなったプログラムだと感じました。

参加者の評判もとてもよいそうですよ。

その他の依存症と予防法

その他、ネット依存症やゲーム障害、
ギャンブルや世話焼きなど様々な依存症もご紹介いただきました。

最後に、脳は神経の塊で敏感だからこそ、
神経に気を遣ってあげ、
「神経美人・神経美男」になってこそ
予防をすることができるとのことでした。

気を遣うとは、神経をよく管理すること。
神経は脳であり、損傷を受ければ脳を捨てることであり、
脳が損傷すると考えも駄目になり、非正常になると。

神経を傷つけるものを知り、しっかり自身を管理することが
自分の運命を左右するとのことです。

20181020セミナー
「ハマりやすい性質を持つ」と自らを評しつつ、「『実践すること』と『つながっていること』を両方見て行うことが大事」と語る講師

また、依存症になる人に見られる繊細さやハマリやすさは、
良い方向に活かせば「成功するための能力」になるそうです。

実際、アルコールにハマる人には、
平均以上のセンスや能力をもった方も多いそう。

依存症の場合、周囲にも影響が少なくないため、
感情的にはつい周囲の援助者に肩入れしてしまいますが、
非常に患者に寄り添って見ていらっしゃるんだなと
素人目ながら感じるところがありました。

最後に

依存症に対して様々な知見や気付きを下さり、
依存症患者への人格的な接し方も教えてくださった講師に感謝です。

アンケートでも「もっと多くの対人援助者が聞くべき」
参加された専門医の方がおっしゃって下さいましたし、
多くの参加者から「家族のことをしっかり考えていきたい」などの声をいただきました。

セミナー後に実際に家族の件をご相談された方もいらっしゃり、対応について知恵をつけられたのではないかと思います。

本当にもっと多くの方に聞いてもらいたい内容でした。

「もったいない」のお言葉を多数頂戴しましたので、多くの方に健康長寿に関する情報を提供できるよう一層励んでいきたく思います。

RHOでもまた講師をお招きする機会を作ったり、
依存症についても様々な形で情報提供したいです。

講師を引き受けてくださった垣渕センター長、
また当日の準備に携わってくださったスタッフの皆様、
活動へのカンパにご協力くださった皆様、
本当にありがとうございました!

この記事を書いた人

平良俊也
RHO代表。沖縄県出身。
コンテンツライター兼Webエンジニア。
職業柄見えるメディアの健康・医療情報の取り上げ方に問題意識を抱き、RHOの活動に参加。現在、幼少の頃から染みついた不摂生な生活習慣の改善に挑戦中。